14才の地図

「あら。一平、ぴんぴんしてるじゃない」

目を開けて声のしたほうを見ると、髪の長い、綺麗な女の人が、立っていた。

「ばか。俺じゃなくて、こいつ」

朽木サン、一平って名前なんだぁ…。

「ん。ちょっと、診せて」

女の人は、素早くあたしに歩み寄った。

近くで見ると、ほんとに、綺麗。

大人の女の人の、匂いがした。

どこかで嗅いだような、なんだか懐かしい、ホッとする香りだ。

「じゃ、さつき。頼んだぜ」

「オーケー。終わったら呼ぶから、外、出てて」

朽木サンと、弥勒寺が、部屋を出て行く。

さつきサンは、持ってきた鞄から、消毒薬とか、湿布薬とか、いっぱい出して、てきぱきと治療を始めた。

「ケンカしたの?」

世間話をするように、さつきサンは訊いた。

その声音は、べつに責めているふうでも、お説教するふうでもなかったから、あたしは自然に答えた。

「リンチ」

「じゃ、一方的に、殴られちゃったんだ」

「ううん。かみついてやった」