すかさず、前を走っていた愛美が声を掛けた。
「こんにちは。坂口さんですか?」
私達の突然の訪問に、老人は警戒して後退りした。
それは、当然の反応だった。それだけ私達は追い詰められ、鬼気迫る表情をしていたのだ。
「あ、あの…
貴女達は一体……」
「あ…私達は、長野県の二階堂さんの紹介で来ました。
英二郎さんに、お会いしたいんですけど」
二階堂さんの名前が出て、ようやく表情が穏やかになった。
「ああ…
昨夜、若い女性2人が訪問するかも知れないから、話をしてあげて欲しいと、二階堂さんから電話がありました。
どうぞこちらに…」
二階堂さんは、わざわざ私達が訪問する事を連絡してくれていた。
もし連絡がなければ、こんなにスムーズに話が進む事はなかったに違いない。
きっと、遠方から訪問した事で、何か重大な事情があるのだと思ったのだろう。
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