私の背と同じ程の高さがある白い塀の中を見ると、正面に古い木造建築の玄関が見えた。
右側には納屋があり、典型的な田舎の農家の造りだ。
私達は門から中に入ると、母屋の玄関に向かった。
突然押し掛けて怪しまれるかも知れないが、そんな事を気にしている場合ではない。
木製の格子状になっている扉の前に立つと、チャイムを鳴らした。
しかし、返事はない…
もう1度チャイムを鳴らすと、今度は声も掛けた。
「こんにちは。
あの…すいません!!」
すると、納屋の方から声が聞こえた。
「はいはい、何ですか」
驚いてそちらを見ると、納屋から老人が出てきた。
薄いグレーの作業ズボンに、濃いグレーの薄いジャンバーを着たその老人は、十分80歳は超えている様に見えた。
戦後64年…
年齢的には、ちょうどこの老人くらいの筈だ。
私はその老人に、声を掛けた。
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