「……ほんとに葵といると飽きないな。 まさか魚になりたいって言うと思わなくて。笑ってごめん。 でも、お前すぐ食べられちゃうだろうな」


「……?」



頬を膨らませたまま、視線だけ慶介に送る。
それと同時に、慶介は何かを取り出した。



「俺なら、すぐ食ってる」


「……えぇ!?」




ええぇぇえ!!?

なに? その発言!!?




目を細めて悪戯に微笑む慶介は、真っ赤な顔で口をパクパクさせているあたしを面白そうに眺めている。


「たッ食べるって……な……」


「――それと」



あたふたしているあたしの言葉を遮るように、手に持っていたものを差し出した。




……あ。




「これに思い出を入れて帰ろう」




そう言って、顔の高さまで上げると「はい」とあたしの手のひらに乗せた。



「……綺麗」



それは、あたしの手の中にすっぽりとおさまってしまうような、小さな瓶だった。

蓋の部分が青と黄色が交じり合ったような可愛い魚のガラス細工で出来てる。


まだ何も入っていないその小瓶。



いつの間に買って来たんだろう……



あたしが、ハワイに来て言った事……覚えててくれたんだ。



あたしはそれを太陽に向かってかざしてみる。



空の青さ……雲の白さ……ガラスの小さな魚……

慶介の……優しさ。



「なに いれよう」



溢れ出そうな感情を誤魔化すように、あたしは大きな声で言った。