いつまでたってもアクションを起こさない慶介。
目を開けると、あたしの隣で横になる彼の姿。
「……け…慶介…?」
ワナワナと震える声で慶介の名前を呼ぶ。
すでに閉じられていた瞳を薄く開けた彼は「ん?」と不思議そうにあたしを見た。
え?
ええぇぇぇええッ!!?
うそぉ…今日も オアズケ?
ってゆうか、あたしがそれ言うのおかしくない?
「今日は疲れただろ。 早く寝なさい」
「……」
いつもの口調であたしを言い負かす慶介。
さっきまであたしの髪を掻き上げていた大きな手が、頭の上でポンポンと跳ねた。
もっとあたしに触れてもらいたかったのに。
急に襲ってくる焦りに、あたしは唇を噛締めた。
「どうした?」
いつまでも座ったまま動かないあたしに、慶介は優しく声をかける。
それは、駄々をこねた子供をなだめる声。
それくらいあたしにだってわかる。
「……」
でも今は、それすら疎ましかった。
そうじゃないよ…
あたしが欲しいのはそう言う「優しさ」じゃない。
あたしは…あたしは……
ただジッとあたしを見つめる慶介に、何も言えなかった。
「…おやすみ」
背を向けたまま布団に潜り込んだあたしを、慶介は自分の胸の中に抱き寄せた。
そしてそっと髪に口付けをしてくれた。
「おやすみ…葵」
ばかばか!!!
慶介のばか…
素直になれないあたしのばか!!
素敵な夜になるはずのハワイの初めての夜は――
胸の中に、小さな穴が出きた。



