「大丈夫?」
耳元で低い声がした。
息がかかりそうな距離。
「・・・あ・・・はい」
あたしはなぜか動く事が出来なくて、そう言うのがやっとだった。
あたしの声を聞くと、彼は「よかった」と柔らかく笑ってあたしから離れた。
「あ・・・ありがとうございました・・・あ、あのッ ごめんなさい」
「うんん、転んじゃわなくてよかった」
やだぁ・・・
見ず知らずの男の人に助けられるなんて・・・
もう、火が出るくらい顔は真っ赤だよ。
・・・熱いもん。
汗吹き出てきたもん。
「葵」
まともに彼の顔を見れずに俯いていると、背後で声がした。
我に返り振り向くと、そこには慶介が立っていた。
慶介は横に並ぶと「大丈夫か?」とあたしの顔を覗き込んだ。
「う・・・うん。平気」
そう言ってみても、全然平気なんかじゃないよ。
心臓に悪すぎ。
だって、慶介にも見られちゃった。
慶介は「そっか」と目を細めると、目の前の彼に視線を移した。
「妻がご迷惑をかけました。ありがとうございました」
つ・・・妻!?
妻って・・・妻って今・・・そう言ったの!?
口を開けたまま慶介を見つめる。
慶介は綺麗に頭を下げた。
その言葉に、彼は「え?」と声を上げた。



