恋スル運命

入って来た男の人を見て言葉を失ってしまった。




入って来た男は“今起きました!”ってくらいの寝癖のついたボサボサの髪型だった。お世辞にも無造作ヘアとは言い難い。




目の半分くらいは髪で覆われてて、無精髭を生やしてるその姿は山ごもりしてる人みたい。




くたびれたTシャツになんだか薄汚れた色合いの所々破れたジーンズに、何故か雪駄を履いていた。





部屋を間違えたんじゃないのかなってまず考える。



だって、大輔さんや内田さんと見た目があまりにも違いすぎるもの。





チラリと隣の萌花と美緒を見ると2人も呆然としてその男を見てる。




そうよ。きっと店員さんが間違えたに違いないわ。





そう思っていた私の耳に信じられない言葉が入って来た。





『海偉(かい)!お前何て格好で来るんだよ。せめて髪と髭くらいどうにか出来なかったのか?』





大輔さんがその男を海偉と呼んで声をかけている。




私の期待も一瞬で掻き消えてしまった。





誰か嘘だと言って……