恋スル運命

「ねえ、ジョージはあの奥様で満足できるの？夜の生活で物足りない思いしているんじゃない？」



そう言って唇を重ねたマリアさん。


ジョージさんは拒まずに受け入れているのを見て、その場からそっと立ち去った。



レストルームに戻り、ドレスがしわにならないように慎重に座る。



二人の関係をボンヤリと考える。



恋人、同士とは少し違うらしい二人。



･･････これからも二人は今までのように関係を続けていくのだろうか。



そうなると、私は？



いずれ捨てられるのかしら。



捨てられたら、私の実家への融資は？



それが気になり考えていると、ほどなくしてジョージさんが戻ってきた。


「気分はどう？会場にいっしょに戻れそうかい？」



何事もなかったように接してくるジョージさん。



だけど。
彼の口の端に拭いきれなかったマリアさんの口紅が付いていた。



色濃く残る真紅色は、私が付けている色よりも遙かに濃くて。



誰が見ても私と口付けをして、付いたものではないと気づかれてしまう。



「サラ？まだ気分が優れない？」




心配そうに近づいて、座る私の前でひざを突きのぞき込んできた彼の顔にそっと手を伸ばした。



「ルージュが、ここに･･･」



手に持つハンカチでそっと拭うと、ジョージさんは表情を変えた。




「サラ、これは、」




何かを言いかけて、口を閉ざす。



私に知られたことで相当動揺しているみたいだ。




「･･･会場にもどりましょうか」



「･･････ああ、そうだね」



無理に聞き出すのはどうかと思って言うと、ジョージさんはホッとした顔をしていたように思う。




ジョージさんと一緒に戻った会場には、すでに帰ってしまったのかマリアさんの姿はなかった。