恋スル運命

「せっかくだから少し散歩でもしない？
こっちに来てから家に籠りきりで運動不足だったのよね」





『いいですね！そう言えば裏手には、馬を放し飼いにしてるとお屋敷で働く料理長が仰ってましたよ』




「馬？見たいわ！早速行きましょう！」




片手でスカートの裾を持ち、もう片方の手でユーリの手を引っ張って駆け出した。




人の目を気にせずにいるのも、外の空気に触れるのも。走るのも久しぶりで、このときの私は、思ってた以上にはしゃいでいた。






コテージの裏手は、草原、この言葉がまさに当て嵌まる綺麗な草地だった。




ただ放し飼いにしているという馬は、散歩にでも出たのか、見渡す限りには見当たらなかった。




『素敵な場所ですね』



「そうね。そうだ！
この草原の真ん中で寝転がってくわ！ここで待っててね」



『え？』



答えを聞く前に、草原の中心へと駆け出して、そして真ん中辺りで立ち止まり、そのまま仰向けになって寝転んだ。





目に映るのは見渡す限りの青い空。日差しのお陰で、地面もほんのりと熱を持って暖かい。



嫁ぐ前まで当たり前に感じてた空が、地面が。自然がとても懐かしく、愛しいものに思えた。