恋スル運命

お屋敷を出て、少しすると私の乗っていた車が横揺れし始める。




『ここからがヴェルレール家の所有地となります。道が舗装されてませんから、揺れますが到着までご辛抱ください』




運転手が申し訳なさそうにそう告げたので私は首を横に振り平気と告げる。




田舎育ちの私からしたら舗装された道の方に違和感を感じる。これくらいの揺れなら、平気。実際、家にいた馬に乗って走ってる方が揺れてたもの。




「お気にならさないで」




運転手にそう告げて窓の外を見る。景色は見渡す限り、木。木。木。

冬だから葉は無いけれど、春になれば青々とした葉が繁って、見るものの心を癒すだろう。




その景色がどこか故郷と似通っていて、安堵する。




私には都会よりこういった自然の方が馴染んでるわ。



私は今、カイさんのいる場所へ向かうためにユーリと一緒に車に乗っていた。





お屋敷ではない場所で私の肖像画を書くことが決まったのは2日前。




話があった翌日すぐにでも行くと思っていた。



けれど




『今度パーティーがあるから着ていくドレスを仕立てよう』




そう言って、お屋敷にドレスを作る人を呼び立て、頭からつま先まで採寸されたのが昨日の事。




その採寸中に、『次の社交界はサラ様のお披露目を兼ねることになるでしょうから、うんと派手で華やかなドレスを作りましょう』
と言われ言葉を失った。