恋スル運命

草原に白馬の絵がリーフレットに載っていた。




やっぱり私、この風景を知ってる。




見るだけで懐かしさが込み上げてきて、それでいて胸が切なくキュっとするのは何故?




『沙羅どうかした?入んないの?』




入り口でリーフレットを見たまま立ち止まってる私に美緒が声を掛ける。




「あ…ごめん。ボーッとしてた」




少し先へ進んでた美緒と大輔さんのもとへ小走りで向かった。





進む順路が矢印で記されていて、それにならって歩を進める。





等間隔で壁にかけられた海偉の絵。





どこかの公園の風景といったわかりやすい絵もあれば、




『これ、何かしら?

タイトルは“海陽”ってなっているけどなんだから暗くて不気味じゃない?』




美緒が言うようにパッと見、なんなのかわからない絵もあった。




今目の前にある絵がまさにそれ。




全体的に暗く寂しげな色合いの中にぼんやりと小さく光る白い円。




タイトルからしても多分……




「コレ、海底から見上げた太陽の絵なんじゃないかな?だから“海陽”」





群青に幾重にも重なる深い青。

深く暗い海の底。



暗い

怖い




心許なく見上げた頭上。




そこにはやっと少しだけ入る光。



それは小さくて、手を伸ばしても届かないくらい遠い太陽。




けど、心細い中で見つけた暖かな優しい光。





私はこの絵に不気味さは感じない。



むしろどこか優しさを感じる絵だった。