メールを見るとビデオレンタルショップのクーポンと新作紹介メールだけ。矢野からは来てない。



あいそつかれたかな。
いや留守電攻撃かな…。

一件目、矢野からだ。

「明日のミーティング、遅れないようお願いしますね。あとDVDもお忘れなく。」

なんと。

1日間違えてた。

ラッキーなのか何なのか、まあストレスの大半は去ったわけだ。

おいぶたねこ。

何かおまえ幸運を運んでるかもなぁ。ネコ缶食べるか?

急に目の前が明るくなったせいか、ねこに感謝していた。

ただ日にちを間違えて、勝手に焦っていただけなのに、妙にスッキリした。

後はYUIのことだな。
写メールでも出してみるか。

ぶにゃ〜っとお腹を出してる姿を目一杯アップで撮って、『ぶたネコ』ってタイトルで送った。

本当ほのぼのしてるよ。

これはいいな、待受決定。
すぐにYUIから返事がきた。
「今日これから会えない?」

予定は吹っ飛んでるし、まっいいか。

「YUIの話聞いてやんなきゃな。相当悩んでるみたいだから」。ぶつぶつ言いながら、返事を送った。

何時でもOK。近くまで行こうか?

すぐに電話がきた。

「もう駅まで来てるの。家にいると滅入りそうだったから…。駅まで出てこれる?」

「もちろん。今近くの公園にいるんだ。迎えに行くよ。」

駅前で待つYUIに手を振ると泣きそうな笑顔。

相当まいってるな…。

俺はロータリーを小走りで横切りながら、まず何て声かけようか考えてた。

「久しぶり、腹減ってない?」

YUIはあきれたように笑い出した。

「相変わらずね。人が悩んでるってのに」

付き合ってた頃は、待ち合わせると毎回このセリフだった。
ある時、YUIがマジギレしたことがあった。
その時も確か、相談があるって呼び出されたんだったな。
すぐに謝って、なだめながら入ったパスタ屋さんで、大盛の山賊スパゲティーをもぐもぐ食べる俺を見て、大笑いしてたっけな。