佐紀が、家の居間で、ソファに寝転んで、
本を読んでいると、母が入って来た。
「あら、めずらしい。
本なんか読んで」
「だって、コーチが読めって」
「まあっ、それはいいことじゃない。
これで成績も上がって
くれないかしらねぇ」
「知らない」
リビングから、キッチンへ行こうとする母
「あなた、宿題は?……済んだの?」
「まだ」
立ち止まり、振り返る母
「何してるの。そんなものより、
先に宿題、しなさいよ。
もう、あなた、何でも
バスケ、バスケなんだから。
中学生の一番は、勉強でしょう?」
「もう、わかってるって」
ソファから起き上がる、佐紀
「ちゃんと勉強するから、
という約束でしょ?
他の人は皆、塾へ行ってるのよ。
成績が下がったら、部活、
やめてもらいますからね」
「わかってるって。
うるさいなあ。もう、寝る」
立ち上がる佐紀
「えっ、もう。何で?」
母は、時計を見る。まだ9時前
「コーチが、早寝・早起きしろって」
部屋を出て行く佐紀
「そんなこと言って、
あなた、宿題は?」
奥から、佐紀の声
「明日、朝、する」

