前の日、ビルの工事現場。

三田が、軽トラで、弁当を食べていると、
携帯が鳴った。

三田 「もしもし。あっ先輩。
    ご無沙汰してます」

先輩 「おぉ、久しぶり。
    おい、突然で悪いんだけど、
    お前、今、どこかで、
    コーチしてんのか?」

三田 「いえ、コーチはもう……、
    あのチームでコリてますから。
    あれからは、何も…」

先輩 「実は、恩師からコーチ、
    探してくれって、頼まれてな。
    いろいろ当ってはみたんだが、
    なかなか、いなくてさ。
    もう、お前しか残っていないんだ。
    なんとか、頼めないか?」

三田 「いや…、もう、コーチは……」

先輩 「そんなこと言わずに、頼むよ」

無言の三田

先輩 「ダメかぁ?…」

三田 「すみません」

先輩 「じゃあ、見に行くだけでもいいから
    一度、行ってくれないか?」

三田 「いや、しかし……」

先輩 「頼むよ。行くだけで、
    俺の顔も立つから、なっ」

しばらく考え、渋々

三田 「はい、じゃあ」

先輩 「おお、すまんな。
    なんか、スゴいチームらしいから」

三田 「えっ、いや、そんな強いチームは」

先輩 「ハハハ、逆だよ、逆。
    まっ、行けば分るから。
    詳しいことは、また後から、
    連絡するよ。
    じゃっ、頼んだぞ」

電話が切れる。

携帯を戻し、遠くを見つめる三田。