天使の林檎

 なんとなく気づけば私と友紀、そしてなぜか秀ちゃんと3人で一緒にいることが多くなった。

 またいつもの魔のトライアングルが発生する状況だけど、秀ちゃんは友紀に全然興味がないみたい。
 いつも友紀のことを『桃の友達』って言い方で、友紀との会話も普通に楽しんでいるみたいだった。

 友紀も秀ちゃんの前では、言いたいこと言って良く笑っている。

 秀ちゃんは友達がたくさんいるから、私といつも一緒ってわけじゃないのも状況に当てはまらない1つなのかも。

 あと、私と別れた智は、懲りずに友紀がレズビアンだとか、邪魔したせいで私と別れたと言いふらしていたようだけど、私が冗談で友紀に好きだとみんなの前で抱きついたら、冗談だと思われて智のヒガミってことになった。
 それからは時々智を見かけるだけで関わりはない。

 そして新学期が始まって2週間が過ぎた。

 新学期初日から色々あったけど、今は落ち着いてきたと思う。

 噂で何度か、新入生に天使がいるって聞いた。
 きっとあの彼のことだろう。

 今でも私のポケットにはあの青いハンカチが入っている。

 返さなくてもいいって言っていたけど、ちゃんと返そうと洗濯してアイロンもかけた。

 明日返そう。
 明日こそ。
 そう思っていたら、随分空いてしまった。

 今ではポケットの中にハンカチが入っていると思うだけで、私の気持ちが落ち着く。

 何だかすっかり私の私物化としてしまって、本当はいけないことだけど、このままお言葉に甘えて貰ってしまおうと思ってる。
 もちろん、貰いっぱなしは悪いので、また会うことがあったら渡せるようにと新しくハンカチを買った。

 ふと彼のことが思い出される。

 本当に綺麗な男の子だった。
 まさに天使って言葉がぴったりなほど。

 あんな綺麗な子っているもんなんだなってびっくりした。

 今日は新入部員が入ってくる初日。
 まだ仮入部中になるけど、部員獲得には大切な日でもある。

 私はカバンを持って美術室に向かった。