天使の林檎

 全然打ち合わせにならなかったのに、先輩達は優しかった。
 友達とかは少ないかもしれないけど、周りにいる人はいつだって私に優しい。

 いい人ばかりに囲まれていると思う。

 泣くだけ泣いてスッキリした後、簡単な打ち合わせを済ませて解放される。

 先輩達は気遣う気配は見せたものの、最後まで何も聞かなかった。
 たった一言、話したいことがあったらいつでも聞くと言葉をくれただけ。

 傷ついた分、そんな先輩達の優しさがその傷を覆う。

 誰もいない廊下を歩いて教室へ向かう途中、少しだけ微笑む。

 大丈夫、私はまだ笑える。
 無理に強がる必要もないけど、弱い自分ではいたくない。

 廊下を歩く私の足取りはしっかりとしたもので、私は前に進んでいる。

 もっとゆるぎないぐらい強くなりたい。
 強くなってもう2度と誰にも私の心をゆるがせやしない。

 私はちゃんと強くなってみせる。

 恋は終わっても、私の人生は終わらない。

 もっと視野を広げよう。

 次に恋をした時に、素敵な人を見つけることが出来るように。
 きっと、この失恋が私を成長させることに必要なことだったんだと思えるように・・・・・・。

 そう思いながら教室のドアを開けた。
 中に人がいるとも思わず・・・・・・。