でも、それが本当ならなぜ、涼はその誤解をそのままにしたっていうの?
 私はそれでどれだけ苦しんだか・・・・・・。
 涼が私を好きだなんてそんなはずない。

「嘘、嘘、嘘! じゃあ、どうしてすぐ否定しなかったの? そうしたらこんなことにはならなかったじゃない」
「愛田が傷ついたように、奈保もまた傷ついていたんだ。いくらなんでも俺には奈保の傷を広げるような行為は出来ない。特に奈保はプライドが高かったしね。俺が否定すれば、奈保の立場はますます追い詰められていただろう。そんな時、奈保が何かするんじゃないかと思ったからこそ、何も出来なかったんだ」

 少し淋しげに笑う涼は、やっぱり明とは兄弟だと思わせるぐらい似ている。

「俺はずっと、けじめのつかないままの気持ちを抱えていたが、明が愛田を好きになったのは、俺がすべてを話す前からだったんだ。気にすることなんてないのに、やっぱ性格なのか、明は俺への反発と、後ろめたさに苦しんでしまっていたんだ」
「・・・・・・」
「自分が話せば俺と愛田が上手くいくと思っているのに、自分の気持ちがそれを邪魔する。だからこそ、明は余計に苦しんでしまった」

 苦笑している涼を見て、切ない思いはあるけれど、私と涼の間にはもう区切りがついてしまっていることが感じられる。
 繋がらなかった想いは、もう別の方向へと流れ出していて、それをまた繋ぐことは出来ない。

 私がまた涼を好きになることが出来ないように・・・。
 
「掛け違ってしまった想いは、もう直す事は出来ない。それは俺にも判っていたし、愛田、・・・もう、お前にもわかるだろう?」
「・・・うん」
「明は愛田のことだけしか見えてない。自分が引き下がれば愛田が幸せになると思い込んでいて、もう遅いという事が見えてないんだ。・・・だから、きちんと明に教えてやってくれ。今、愛田が誰を好きなのか、ちゃんと言葉で明に伝えてやって欲しいんだ」
「涼・・・」

 涼が言う通り、涼への想いはもう想い出になっている。
 私は、歩き出しているんだ。
 明とともに・・・・・・。

「うん! 今度こそ、ちゃんと告白する。私は明が好きだって!」

 中学時代の、言いそびれてしまった告白。
 でも、今度は自分も勇気を出すの。
 自分から、明が好きだって・・・・・・。