『いろいろ…ゴメン』

背中から聞こえた大斗の声。


『あたしも…ごめんなさい…』

『ほんとだよ』

『もぅ゙ーッ』


頬を膨らませる。

やっぱり涙が出てきた。

でも、それは嬉し泣き。


『ひっ大斗の部屋片付けたよ』

『わりぃ…』

『超ぐっちゃぐちゃ…』

『お前のせいだけどね』

『ゔっ…』

『…』


『『ゴメン…』』


重なる2人の声だった。


クスクス


『あたし…咲さんに会ったよ』

『そう』

大斗は余り驚く様子なく答える。

『知ってたの?』

『勘。』


そうだよね。これが大斗と咲さん。

やっぱり羨ましいけれど、もう不思議と悲しい気持ちはなかった。


『俺…さ、咲の事はやっぱり特別なんだ。でもお前は全くそれと違う。もっと…』


そこに続くであろう言葉はあたしの胸の高鳴りを上げる。


抱き締められた腕の力が強まれば、心はもっと満たされる。


『あたしもだよ…大斗』


言葉で賄えないくらいの「好き」なんだよ


大斗も同じで居るんだって、なんの疑いも無く今ならちゃんとわかるから。


 ザザーン

  ザザーン

   ザザーン



そうして2人でしばらくそのまま空と海を見ていた。



段々と世界は紺色に、深い深い碧になっていく…


なんて綺麗なんだろう



『おい』

『なに?』

『ところで「付き合う」って何すんだ?』


しばらくして聞こえたのは

海の音に響く大斗の間抜けた言葉。

『へ?!』


やっぱりなんかこの人ボケてるっ


『大斗が「付き合う」なんて言葉言うとなんか変だね?』

『おまっバカにすんのもいいかげんにしろ』


クスクス


『えっと…学校一緒に行ったり?』

なんだか、物凄く楽しくなった様子の夕陽は話し出す。

『帰ってるな。他は?』

『家行ったり?』

『してる』

『お弁当作ったり』

『済み』


「済み」ってっ!!