―――――――


『家出…したな…』

恭次はため息と共に言った。


クリスマスのあの日のように部屋はメチャメチャになっていた。

あの日にかなりな物を破壊していた部屋は更に物が少なかったが、残っていた本やわずかな食器類は酷い状態だった。


『恭次くん…これ…』

ベッドの上に紙袋が置いてある。

『あたしのお弁当…』

そこにあったのは、保健室に置いてきたはずの夕陽が作ったお弁当箱が3つ。

『空っぽ…』

それを手にした夕陽は小さく呟く。

3つ全てが空だったのに加えて、更に綺麗に洗ってあった。

小さな台所も床の上もグチャグチャであるにも関わらず

その紙袋だけはそれらを避けるようにベッドの上に置いてあった。


大斗が夕陽と中庭で離れてから3日が過ぎていた…



――――――


うわぁぁぁぁああん!!


中庭で泣き続けていた夕陽。


「ひぃちゃん!!」

恭次と南深が駆けてきた。

「大丈夫…?ひぃちゃん…」

南深が夕陽の背中を擦る。

「恭次、神崎くん行っちゃったよ…」

「駄目だ。あいつは…ああなったら止めらんない」

「どうすんのよ?教室メチャメチャよ?」

「とりあえず、マスターに電話する。このままじゃ大斗、学校にまずいだろ…」

「なんでそんなに冷静なのよ?!」

「冷静って…本来の大斗はあんなだったし、むしろもっと酷かったんだ。」

「そんな…」

「ひぃちゃん…平気?」

恭次が心配なのは夕陽の事、至って冷静に夕陽に声をかけながらマスターに電話をする。


「ひぃちゃん…話せる?マスター…」

夕陽は泣きながら小さく頷く。


〈夕陽ちゃん大丈夫か?〉


「し…しげさん…ひ、大斗が…」


〈落ち着いて。俺は今北海道だ。そこには行けないからちゃんと聞いて〉



「うぅっ」


〈夕陽ちゃんは大丈夫か?〉



「うっ…」

〈学校の事は心配しないでいい。嫌な話だが、僕ら夜の世界は権力がある人にほど強いからね〉