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夕陽がトイレでメイクを直している内に、大斗は会計を済ませて既に外に居た。
『乗って、家まで送る』
夕陽は気まずくて、断るタイミングを取れず素直に自転車に乗り込んだ。
猛スピードで進んでいく。
月の光に照らされた。
道案内をしながら行く帰り道、何だかとても変な気分
神崎君は何も聞かないし、何も言わなかった。
人が泣いていたのに気にならないのかな?
うううん、違う…
何があったかは分からないはずだけど、何かを感じたんだろうな。
きっと、あえて何も言わないんだ…
なんとなく、そんな気がする。
神崎君はいつも勝手で…
沢山言葉を話す訳ではないけど…
人の心の動きにすごく敏感…
な気がする。
普段1人で居ることが多い様子の彼は
本当はどんな事を思っているのかな?
多分…
色んな時に、あたしが本当に嫌がったら勝手なこともしないんだろうなぁ…。
そうこうしている内にあっという間に家の前。
『ありがとう』
そう言って自転車を降りる。
『咲、あんなやつだけど、よろしくしてやって』
大斗は夕陽に片眉を下げて、優しい声で言った。
神崎君、よくこの顔をする。
咲の話をする大斗は、本当に穏やかだった。
『それにしても、でっけー家だな』
突然、夕陽の家を見上げて大斗。
…
あたしが好きじゃない家…
『でしょ?あたしの両親、お医者さんでね。イギリスで働いてるの…』
夕陽は自分の家を見上げて少し寂しそうに言葉を落とす。
いつもはそんな気持ちは隠すのに、今日はなんかできない。
本当に大きな家…
寂しくなるばっかり…
夜風はまだ今日も涼しい…。
星は見えなかった…。
『あのさ――』
大斗が何かを言いかけた
〜♪〜♪〜♪〜
それを遮るように、夕陽の携帯が鳴る。
今時の曲が闇の中に似つかわしくなく、響く