おでこに当てていた手を離して視線を外した。


バシッ!!


するともう一発叩かれてしまう。

『うぎゃっ!!』

『バカだろ?今さらそんな事言うわけ?お前はすぐフラフラ危ない状態になるんだから、そっちのほうが悪いだろうが!!』

思い切り怒鳴られてしまった。

『だって…』


大斗の前だと…

どうしようもなく気が緩んでしまって、崩れた時にどうなるか…

そんな自分が怖いから…

その先に見えるものを未だ見たくないから…


『ごめん』

大斗は泣きそうな夕陽を「困ったやつだ」と、はぁ…ぁ。と見ながら

『じゃぁ寝ようか…?』

とフッと言った。

『えっ?!寝る…?』

きょとんと大斗を見る夕陽。


…寝る?


『大斗が「寝る」とか言うと怪しい』

頭で思ったことが思わず口に出ていた。


しまった!!


と思ったその時にはもう遅い…


一瞬の内に

あたしの前に魔王が君臨した。


『夕陽ちゃん♪なんか、やらしい事考えたでしょ?』

とニヤリ


やってしまった。

この人っ危ないんだったっ!!

しかも前科多犯!!


あたしはサザーとそのまま後退り

飛びきりの笑顔で悪魔が追いかけて来るので

とりあえず踵を返して走った!!

でも…

あっさり


『捕獲♪』


と追い付かれ手首を捕まれてしまった…


げっ…


恐る恐る振り返った。


大斗は真顔で見つめてくる。

まっ待った…これは危険…???

するとフッと一度不敵の笑みを溢した後…

彼はサラリと柔らかく笑った。




『荷物準備して今日は早く寝ようぜ?』


何も返せなくてただ大斗を見ていた。

その顔はもう、魔王の顔ではなかったから…


『俺さ…小学校、行こうとした前の日、超不安で…半年振りくらいだったし…俺は独りで居られなかった…』

『大斗ぉ…?』

『今のお前もその時に似てるんじゃねぇの?別に何にもしないって。ちゃんと明日を向かえようぜ』


「ね?」と…あの顔をしてポンっと頭を叩かれた。