そう言って、空を見上げていた。


神崎君の「事情」は一体どんなんだろう?


『親死んでるから弁当食べる事もうないし♪』


今度は妙に明るくあっけらかんととんでもない事を言った。


『え…?』


夕陽は苺牛乳を吹き出した。


えっ?死んだって…




『そんな驚かないでよ』


大斗は夕陽を見て、ちょっと可笑しそうにしている。


サラッと言う話?神崎君…


『色々落ち込んだけど、今は全く持って元気』


余裕で言う。




散るのを忘れた桜の花びらが一枚、お弁当箱に落ちた。


小さい頃にそれを見て「幸せが落ちてきた」と言っていたのを思い出した…


大斗の事をひとつ知った夕陽


『ねぇ?弁当たまに作ってくんない?金払うから』


そんな夕陽に「思い付いた」っと大斗は明るく言った。


『じゃぁ、ヨロシク』


夕陽の返事を聞かない内に立ち上がる。



『弁当箱買いに行こうぜ』


あれよあれよと言う間に周りを片した大斗は


『早く』

屋上の鍵と自転車の鍵を出して急かすのだ。


強引すぎるっ!!


『今から行くの?』

『全は急げー!』

ともう先に行こうとしている。


『ちょとー待ってよ』


夕陽は、急いで後ろに続いた。


また…何やってんのか?

あたし…流されてるじゃん?!


一旦教室に行って鞄をとり、南深達に「出かけてくる」と言って下に降りる。


大斗は自転車にもう乗っていた。


さっきの一枚を最後にか桜の花はすっかり散って、緑の葉っぱを茂らせ風に揺れている。


自転車で一気に駆け降りる坂道。


春風は少し鋭い熱を帯ていた。



春が終わろうとしている。


みんなそれぞれ何かを抱えているんだね…


それでもみんな楽しくいようとしてるんだ。



ねぇ?

拓ちゃん…

拓ちゃんも頑張ってる?