拓ちゃん…、そんなことないよ…


少しセンチメンタルになる夕陽。

『イタッ!!』

夕陽の顔を見た大斗は彼女をデコピン。

文句を言おうと口を開くが、大斗が彼女の口を押さえるので、言葉が言えない。

代わりに彼を睨み付けた。


『でも拓巳、大人になったよね?あの頃、あんなとんでもない中学生が先生だなんてギャグ??』

『そりゃそうだ。大分公正したよ。お前と遊ばなくなってからかなぁ~?』

拓巳は冗談っぽく答える。

『人のせいにしないでいただけません?!』

『だってさ、咲が光輝さんと出会って俺振られたじゃん?俺って振られまくり?』

『ふったって人聞き悪いわねっ?!その前にあたしたち付き合ってたかしら?』


ふーっと咲は煙草の煙を空に溶かす。

『それもそうだ』

『―…』


『光輝さんは?今…』

拓巳は静かに問いかける。


『光輝は…ニューヨークに居る…もうあれから5年くらい会ってない。』

切ない顔で答える。

この顔は大斗たちには見えていない。


『なんだよ驚いた。お前と連絡とれなくなった頃だろ、それ…。咲の事だから付いてくとか考えなかったのか?』

『思ったよ。でも…あたし意地はってね、光輝にも言われて。くやしくってバカみたいに日本に残った。あたしにとったら会えない場所にいるのは別れと一緒』

『まぁ咲らしいかもな』


夕陽は大斗を見た。

彼は空を見上げて煙草を吸っていた。


大斗…咲さんの元カレの話なんて聞いて、何を思うのかな…


『イッテェッ!!』

夕陽はぼーっとする大斗にさっきやられたようにデコピンをしかえした。

大斗は舌打ちして彼女を睨み付ける。

『ばーか』

夕陽は言う。