―――――――――――


『これ、「新作なんですけど、試しに食べてみてください」って店長が』

「お弁当の本」を見ているあたしにカフェのスタッフが声をかけてきた。

ここは週2、3回あたしが夜ご飯を食べに来る場所。

中学生が夜に制服で居るのはいけないだろうから、いつも着替えて少し化粧をしてからくる。


あたしのお気に入りの場所♪


『良いんですか?ありがとうございます♪』

目の前に可愛いケーキが置かれた。


今から3つ前の春風の季節、これがあなたとの出会い。


『いつも来てくれてるよね?俺、キッチンで働いてるんだけど、この席だけ中からでも見えるんだ、だから何となく知ってる気になっちゃう』


あたしはいつも窓側の一番はじっこに座る。外が良く見えるから好きな席。


なんだか嬉しくて、顔が笑っちゃう。


お兄さん、どれくらい年上かなぁ?パタンと「お弁当の本」を閉じて、それを受けとった。

『ここのご飯好きで、いつも来ちゃうんです。』

『俺も好きでさ、ここでバイトしているんだ。俺、小田切拓巳(オダギリタクミ)高3。よろしく』


高校生だって♪なんか大人な感じ。


『片桐夕陽です。よろしくお願いします。』

あたしと拓ちゃんの物語は、街の小さなカフェから始まった。



『えーっ!!夕陽ちゃんってまだ中学生なの?!』

ある日、拓巳君は制服のあたしを見て驚いて言った。

あれから彼は休憩や手が空くと、あたしの席にやってくるようになっていた。

その少しの時間がとても楽しみで、少しでも機会を増やしたくて、今日は家に帰らず学校から直接来ていた。


『言ってなかったっけ?あたし中2だよ。老けてる??』

拓巳君は笑いながら

『老けてるって、違う違う。いつもの格好が大人っぽいから、俺より年下だとは思ったけど、高校生かな?って思ってただけ。どの道老けてるって歳じゃないよね?』

ケラケラ笑う彼。制服のあたしは今日は化粧も薄い。