寝不足な目を擦りながら、私は階段を下りた。


居間がやけに静かだと思ったら、お父さんとお兄ちゃんはいなくておばあちゃんがそこで寝ていた。

縁側に向かい久しぶりに晴れた外を見た。
車とバイクがないから、お父さんとお兄ちゃんは会社と部活に行ったらしい。

静かでとても快適。



なんとなくテレビを点けると、音に気付いたおばあちゃんが目を覚ました。


「おはようはるちゃん、起きてただかい。今日は早いにぃ」


時計は10時を指している。
いつも昼過ぎまで寝ている私にはけっこう早い時間だ。

時々お父さんに起こされたり、用事で起きたりするけど。


「ご飯はどうするだい?」

「んー……食べる」



家はいわゆる父子家庭というやつで、家事はお父さんの母、つまりおばあちゃんにやってもらっている。
おかげで私は料理と裁縫が苦手なのだ。


近頃はおばあちゃんの足が良くない。
そろそろ私も家事を始める頃なんだろうと思っていても、数々の失敗談を思い出すとそんな気は一瞬で冷める。



おばあちゃんが少し遅い朝ごはんを持ってきながら私に訊いた。

「今日はどっか出かけるのかい?」

「ううん、友達が来る」


ご飯を口に入れつつ答える。


「あらやだ、こんなにごったくにしてていいだかいや」

「私の部屋だから大丈夫」


「ごったく」とは、散らかっているとか、片付いていないとか、そんな意味だ。

こちらでは普通に遣っているが、これは方言だと思う。



友達とはもちろん優司のことで、私の部屋ももちろんごったくしている。
午後に行くと昨日連絡あったから午前中は片付けておこうと早起きした。

――本当はもっと早く起きたかったが2度寝してしまったのだ。