ゴール裏には数十人が残っていて片付けをしている。
さっきまでスタジアムを覆っていた喧騒はもう無くなっていた。

しぃちゃんの友達を見送り僕らも帰り支度を始める。
僕は段幕入りの大きなバックを肩に掛け、しぃちゃんに「帰りますよ」と声をかけた。

しぃちゃんはピッチに向かって目を閉じていた。
大きく深呼吸をしたあと、「うん」と頷き一緒に階段を登り始める。

(*^^)
「あ、ちょっと」

(´・ω・`)
「はい」

少し先を登っていた僕に並びかけると手を繋いでくる。

(*^^)
「えへへ」

しぃちゃんの手はとても冷たく、僕は繋いだままの手をジャンバーのポケットに押し込んだ。

(*^^)
「あったか〜い」

そう言うと体を寄せるようにして一緒に階段を登っていった。





帰りはB駐車場に停めてあるしぃちゃんの車で僕のアパートへ向かう事になっていた。

北口ゲートを抜け、駐車場を目指して歩く。
途中振り返るとビッグアイの屋根が夕日に照らされて銀色に光っていた。
僕らは夕日に向かって歩く。

(*^^)
「ね、ゲーフラ作ろうか」

(´・ω・`)
「誰がですか?」

(*^^)
「あたしに決まってるじゃん」

(´・ω・`)
「しぃちゃん・・料理は得意ですけど、裁縫苦手じゃないですか」

(*^^)
「そこは、ほら協力して」

笑いながら言う。結局僕が作る羽目になるのは解っていた。

(´・ω・`)
「良いですよ。今度材料買いに行きましょう」

そんな事を話しながら歩いていると、しぃちゃんの足が急に止まった。
「ん?」と思いしぃちゃんの顔を覗くと苦痛に歪み蒼白になっていた。

(´・ω・`)
「ど、どうしました?!」

(;*^^)
「うん・・ちょっと・・お腹が・・」

「でも少し休めば大丈夫だから」と続けた。

僕は慌てながらも歩道の脇にあったベンチにしぃちゃんを座らせた。

しぃちゃんの話によると、最近良く下腹部が痛くなる事がある。でも放っておけば自然に痛みは治まっていく。病院へは行ってない。あの日に限った事ではない。
―――事が分かった。