「寛司はレディーファーストって言葉知らないの?」
「少なくとも、未来に使う言葉じゃねぇよな」
「な…!バ寛司ー!!」
思いっきり寛司を睨み付けた瞬間、後ろの方から、寛司でも、愛海ちゃんでも、他のクラスメートでもない人の声が聞こえてきた。
「そんなに騒いでよ、クラス中の視線独り占めじゃねぇか、寛司」
「うるせぇよ。お前だってさっきまで独り占めしてただろうが、レン!」
寛司の発した言葉に、あたしはカチンと固まる。
目を大きく見開いて、寛司をずっと見つめる事しか出来なかった。
―――今、レンって言った!?
いやいや、だけど寛司はハッキリと「従兄弟」って言っていたし…。
よく考えれば、“レン”なんて名前の人は世界中いくらだって居るし、きっと偶然だよね、偶然!
そう、偶然、よね…?
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