次の瞬間、笑顔を浮かべた寛司は翼をはためかせ、大空へと、いや天界へと戻っていった。
寛司は最後まで、あたしに恋心を抱いてくれた。
それだけであたしは、寛司の居ない世界でも、頑張って生きていこうと思えるよ。
「ミライ、俺達もそろそろ帰る」
それでも、ひとつ大切なモノを失ったあたしを、現実はまだ苦しめたいみたいだ。
声の主はクロス。その熱い視線に、あたしは再び言葉を失う。
そうだ…
寛司が天界の人だった、という現実を受け入れても、あたしはまだ波乱が待っていたんだ。
「もう…行くの?」
「ああ。溜まっている仕事もたくさんあるしな。行きましょう、レン様」
クロスの言葉は、あたしに容赦なく現実を突きつけてくる。
正直、もうボロボロだった。大切な人を失っていくという悲しみに、耐えられそうにない。
そんな苦しみを相手に一人戦っていると、大好きな人の声が、あたしに耳を貫いた。
「クロスは先に帰っておけ。俺はミライと少し話をしてから帰る」
.

