まるで、戦場。

凶器である銃が、拳や包丁に変わっただけ。



人々の悲鳴や苦しむ声が、あたしの聴覚に襲い掛かる。


だけど、振り返ってはいけない気がした。




「レンに寛司…あたし達一体何処に向かってるの…?」



「とりあえず、人が居ない所だ。こんな所で立ち止まってたら、俺達まで襲われるぞ…!」




体力には自身があるあたしだけど、目的地が分からない為、ペース配分が出来やしない。


少しだけ息が上がってきて、グッと堪えようとした時、あたしの視線はある光景を捉えてしまった。


自然と足に力が入らなくなり、立ち止まってしまったあたしの方を、レンと寛司は焦りを滲ませながら振り向いた。




「何やってんだよ、ミライ…!」




レンの声が、遥か遠くに聞こえた。


そして、見てはいけない光景を目にした事を、強く強く後悔した。



あたしの視線の先に、血塗れで倒れている一人の女性の姿。




「愛海、ちゃん…」




.