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―――「ミライ、聞こえるか?」




神経を通って伝わってくるのは、聞き慣れたクロスの声。


声の主は分かっているというのに、何故か今のあたしは口を開く事も無ければ、閉じている目を開く事もしない。




―――「そうか。きっと疲れているのだな」




ふわふわ、ふわふわ。


まるで雲に乗っているような感覚に、全てを悟ってしまった。



あたしはどうやら、死んだらしい。

きっと此処は天国なんだ。



涙らしきモノが頬を伝う感覚が、その推測を助長する。


あたしは、レンを、寛司を、おばさんを、助ける事が出来なかったみたいだ。


クロスが助けてくれたにも関わらず力不足で、もう世界は滅びているに違いない。




―――「ミライ、お前の居るべき所は此処ではない」




え…?チャームを封印出来なかった代償として、あたしは天国ではなく、地獄の方に向かえという事?




―――「早く目を覚ませ。そして、残っている使命を果たすのだ」




クロスの声があたしの脳を揺らした。




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