ブラックホールは今も、容赦無く他の場所を襲っている事だろう。


助けなきゃ、護らなきゃ、


そう思うのに、足が動かない。心が動かない―――




「レン…寛司ぃッ…」




口から漏れるのは、情けなくて頼りない小言ばっかり。


拳を作り、流血するんじゃないかというくらいに、強く強く握り締める。


それでも、あたしの中のモヤモヤは取り残されたままで。



心の中の光まで、チャームに蝕まれているみたいだ、そう自分に対してあざけ笑った時だった。




―――「こんな物だったんだな、お前の覚悟は」



「え…」




慌てて杖を見つめる。


居る訳ない、聞こえる訳ない、そう疑問を抱きつつも、今ハッキリと聴こえたんだ、クロスの逞しい声が。




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