まるで、この空間だけ時間が止まったみたいだ。
外から聞こえてくるアナウンスも、廊下から響いてくる楽しそうな声も、全てが耳を通り抜けていく。
寛司がそっとあたしから離れる時、少しだけ寂しそうな、切なそうな、そんな表情をしていたのが、頭から離れなかった。
「お前、さ」
「何?」
「告白大会―――レンに告るんだろ?」
寛司の顔が、いつになく真剣で、あたしは言葉を失ってしまった。
告白の相手は、別にまだ決めていなかった。というか、現実逃避していて、考えようとしなかったと言った方が正しいんだろうけど。
レンの名前が出されて、あたしは無意識に手の甲を口に当ててしまう。
「未来がレンの事を意識してんのは、気が付いてた」
「な…寛司!?」
「俺が焼き鳥焼いてる時も、登校する時も、いつも未来の視線はレンを探してた。そうだろ?」
.

