そして、あたしは重大なある事に気が付いた。


最近のあたしの心を掻き乱す、ヤツの存在がない事を。




「寛司、レンは?」



「知らね。俺が起きた時にはもう居なかった。どうせ好きなヤツに猛アタックでもしてんじゃね?」




寛司の一言一言に、あたしの胸はナイフで一突きされた気分になり、無意識に制服である長袖のYシャツを握り締めていた。


レンの話題になると、どうしても耳を塞ぎそうになる。



それが、告白大会の話に関係していたら、尚更だ。




「れ…レンったら薄情者よね!あたし達に、恋バナの一つや二つくらい話してくれたっていいのにね!」



「まぁ、な」




心の動揺を隠すように、あたしは寛司の背中を力の限り叩く。


いつもなら大声で「痛ぇよ!」と寛司が叫び、喧嘩になるはずのあたし達だが、やはり寛司は黙ったままだった。




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