「あれは何?」

私が顔を上げて見つめる方向に彼も視線を移した。

「何って何が?」

「カーテン」

「ああサテンだろ。すごい色だな。安い部屋を更に安っぽくさせてるな」

さすがだ。

こんな私の千々に乱れる意識に付いて来られるのは彼が初めてだ。

私は一瞬だけ、気になっていたカーテンのことを忘れた。