疲れた。いくら彼の声が私に安らぎを与えてくれても、その声を聞くには会話しなくてはならない。

人と会話することは、私が世の中で一番苦手とする作業だ。

私は胸の辺りに枕を置いて、それに寄りかかるように身体を伏せた。

彼は私の背後で相変わらず煙草をふかしているようだ。

時折、煙が私の鼻先まで漂ってくる。

柔らかい枕に吸い込まれるように、私の意識が曖昧になっていく。

だけど不思議だ。

確かに疲れてはいるけれど、他人がこんなに側に居るというのに、私の感覚は普段からは考えられないくらい鎮まっている。

なぜだろう?

鼻血と一緒に興奮が抜け出て行ったのだろうか?