リカコは鞄を両手に持って、私の顔をめがけて投げつけた。

その鞄は彼女にしては珍しく丸みのないもので、角が私の鼻柱に強く当たった。

私は、自分の鼻から暖かいものが流れるのを感じた。

鼻を抑えた私の手に、赤い液体が零れた。

生まれてから二度目の鼻血だ。

その様子を見たリカコの顔は笑っていた。

「言っても分からない希菜ちゃんは本当に動物ね。彼にどうやって躾けられたの?厭らしい」