博物館での仕事は公文書館のようにパターン化されることはなかった。

その仕事はおそらく、普通の人間には『簡単な事務』であったが、私には恐ろしく複雑な作業だった。

私は一度教えてもらっただけでは、正確に仕事をすることは出来ない。

しかし、そう何度も忙しい職員達に、自分の仕事について質問するわけにはいかなかった。

私は一生懸命言われたことを自分の頭の中で繰り返したり、言葉を組み替えたりして理解しようとした。

今もそのときの思考の癖が残っている。