Valentine Fake(Intron crack企画)

歩道を歩く小学生の列を追い抜こうとして、少しだけバランスを崩した。

裕美の右手が俺の腰に回される。



彼女が触れる部分だけが、冷え切った体の中で熱くなった。



思わず腰に回された彼女の手を掴んでしまう。


背中越しに裕美の体が震えるのが分かった。

「しっかり……掴まれよ。危ないから」

「うん……片手運転……危ないよ」

それでも俺は手を離さなかった。

裕美もそれ以上何も言わない。