Valentine Fake(Intron crack企画)

「いいじゃん暇なんだから。私徒歩だし。自転車乗せてよ」

言い終わるなり、裕美は自転車の荷台に横から、ちょこんと腰掛けた。

不安定になる自転車の重心を慌てて両手で支える。



「別に……いいけど」

小柄な裕美の体。

きっと俺の半分ぐらいの体重だろう。

後ろに彼女を乗せたまま、俺はゆっくりとサドルにまたがった。

裏門のスロープを曲がり、校庭を右に見ながらペダルに力をいれる。

こんな寒い季節でも、年中無休の野球部は元気に動き回っていた。

ノックを受ける声と、金属バットの甲高い音が寒空に響く。