Valentine Fake(Intron crack企画)

「もっと……もっと言って」

「愛してる。愛してるよ裕美。俺はお前が好きだ」

「いっぱい言って……もっと……もっと聞きたい」


そう言って裕美は俺の胸に顔を押し付けた。

子供のように泣き声をあげる。

通りかかった中年の女性が眉をひそめて俺達を見た。



「何回でも言うよ……愛してる。ずっと愛してる。これからずっと」


冷たい風が俺達にぶつかって、はね返る。

それでも少しも寒くはなかった。

胸に顔を埋め、泣きじゃくる彼女が愛おしくて、暖かくて。

やっと見つけた温もりに、俺は目を閉じて、いつまでも彼女の耳元で囁き続けた。