Valentine Fake(Intron crack企画)

「ごめんね……来年は作ってあげようか?」

「お互いフリーだったらな……ここ曲がるんだっけ?」

言いながらタバコ屋の角を右折する。

「知らないわよ。初めて行くんだから」

急に細くなった道を対向車に注意しながら直進する。

道が狭くなると風も少し弱くなった気がした。

灰色の曇り空のせいだろうか。

町並みがくすんで見える。

智樹先輩の家が近づくにつれ、何故か二人とも無口になっていった。

「帰りはどうするんだ? 迎えに来てやろうか?」

「……ううん。パパに来てもらうか、タクシーで帰る」