そこは美しい深緑に包まれた森。

細い道を白馬と共にくぐっていくと、芝の生い茂った広場に辿り着いた。

広場の中心には、長い箱。

おれは白馬から降りてその箱に近づき、そっと中を覗いた。

……スヤスヤと寝息をたてている女の子。

思わず、おれは呟いた。


「……なンと美しい姫ダ」










「──カットカットカットォ!!」


深緑の森……じゃない、ジメジメした狭い教室に、ヒロの声が響いた。


「ちょっと王子!棒読みじゃん!もっと心を込めて!Heartが足りん、Heartが!」

「だーッ!もうわっかんねぇよ!」

「劇の良し悪しは王子にかかってんだからな!頼むぜ!?」

「プレッシャーかけんなバカ!」


──季節は10月。

もうすぐ、高校生になって二度目の文化祭。


この学校の文化祭は各クラスごとに出店とステージ、2つの出し物が義務づけられていて、おれらのクラス……2−3では、“焼きそば”と“白雪姫の劇”をやることに。

まぁそれは別にいいんだけど……


「なんでおれが王子なんだよー!!焼きそば焼かせろこの野郎!!」