『そのマフラー似合うね。』

そう言ったのは,3年前付き合っていた優しい彼。

大好きだった。

大切な人だった。

でも幸せだと思った次の瞬間には不安になる。

彼の優しさに甘えて,たくさんワガママを言ってしまう私に…

ワガママを言うと,ちょっと笑って眉をハの字にする彼。

困ってるんだ…

なんとなく分かる。

だって,ワガママ言ってるのは私が1番よく分かってるから。

困らせたい訳じゃない。

大切にしたいの。

ずっと一緒にいたいの。

この気持ちを伝えたいのに,

うまく伝えられなくて。

どんどん自分が嫌になる。

このままじゃ嫌われちゃうのも分かっていたのに。

大好きだからこそ,嫌われたくないのに…

あの時。

3年前のクリスマスデートの帰り道。

気がつくと言っていたワガママ。

ハッと気がついた時には,もう遅かった。

彼がフッと笑いながら眉をハの字に下げる。

彼の顔をジッと見た。

―私は今まで,いったいどのくらいこんな顔をさせていたのだろう??

私みたいなヤツ,彼の側にいたらいけない。

こみ上げてきた涙に気付かれたくなくてパッと背を向けた。

「ごめん。もう会わない。」

そう言うと,彼の返事も待たずに家まで走った。