風人が、家に友人を連れて来ても、友人と久音がバッティングすることは滅多にないが、それでなくても久音の優子と奏多に対する接し方は今までよりずっと特別なものだった。
 そう風人が気づく程ぐらいは・・・・・・。

 今までのように、失礼の無い程度に接していてくれればいいのに、久音と接触があればあるほど風人は落ち着かない。
 優子が久音と話していると、特にだ。

 しかし、そんな心配も他所に、家族の誰もが優子が女性だということに気づくことはなく、優子と奏多を加えた夕食は問題なく過ぎ、大量にあった母親の新作料理のほとんどは、奏多の胃の中へと消えていった。

 今回、久音と風人の2人はお腹の張りに苦しむことはなかったし、楽しい夕食の時間だったと言える。

 しかし、運命というものは一度転がると何処までも転がっていくもの。
 事件は食後のコーヒーを飲んでいる時に起きたのだ。

 今日の食事のお礼や感想を述べる2人の会話が、食事に使ったハーブが庭で採ったものだという話に流れ、庭の手入れの話になると、雲行きがおかしくなりだした。

 話はいつの間にか優子のアルバイトの話へと流れていた。

 優子のアルバイト先は造園だ。
 大学の忙しくない時期だとかに、知り合いの造園でアルバイトをしている。

 依頼のあった庭のエクステリアやガーデニングを設備するのだ。

 このバイトも長く、中学生の頃からアルバイトを初めて、今では狭い庭なら優子1人に任されるほどの腕前だった。
 それを奏多が自慢げに話した為に、母親が、優子に自分の家の庭の整備を頼み出したのだ。