「ろくねんまえ…」



お母さんはボソッとつぶやいた。


「なに?」
微かに聞こえるお母さんの声に私は、耳を澄ました。







「ろくねんまえ…わたしが…殺した…」




「え?……どういうこと?」

お母さんの言っていることがわからない。
ひとつ、ひとつ、頭の中の棚に言葉をまとめていく。



「……1人で実家に帰った時…あの子、引いたの。」

そして、横断歩道をお母さんは指差した。

「えっ?!」

私は、耳を疑った。


確か六年前、おばあちゃんが入院してお母さん1人で帰省したことがあった。





「……わたし、何かにぶつかったと思った。でも、急いでたから確かめるのが面倒で…そのままにした…」



「……お母さん…」

お母さんの犯した行為に涙が流れた。







そして、少女が立っていた横断歩道へと目をやった。