それでもマオに背中を押されたせいか、頑張ってみようかなって思えるようになった。


チラチラと、あの人が立っているドア辺りを見ては、何も出来ずにうつ向く。



そうやってると、あの人が降りる駅が近づいてきた。


ここで頑張らなければ!!
意を決して立ち上がり、ドアの方へと進んでいく。



心の中で、自分を奮い立たせた。



でもそんな簡単に人は変わらないもので、あの人との物理的距離が近づいても、結局話しかけることさえも出来ない。



私の弱虫。


そして、あの人の降りる駅になった。



…ごめんマオ…私何も出来なかった…


あの人が電車から降りていく。


弱虫な自分が嫌になり、地面を見つめる。



…?


さっきまで、あの人が立っていた所に、ストラップが落ちていた。


慌てて拾い上げると、ストラップの先に小さな鍵が付いてた。



…もしかしてあの人の?


気づいたら、体が勝手に動いていた。


閉まるドア、ギリギリに電車から降り、あの人を追いかけていた。



階段の上辺りにあの人の姿を見つけた。