部屋の内線が鳴ったのは、私のメイクが8割がた終了し、 左目の下睫毛にマスカラを塗っていたときだった。 フロントの来客の知らせに私がOKを出すと、 数分後に雛子が部屋のインターホンを鳴らした。 照れたように笑いながら入ってきた彼女は、 ネイビーのパーカーを着てストレッチのきいたジーンズをはいていた。 「太った?!」 私が思わず言うと「言わないで!!!」 と言って、たすきがけにした茶色のかばんを体の前に回し、 唇をへの字にまげながらベッドに腰掛けた。