それからも、ユキさんは昔を懐かしむように、高校の頃のマキトのエピソードを一つ二つ話しました。

そして、話がひと段落したところで、自分の携帯を出して、なにやら操作します。

「ん、これでよし」

そうユキさんが言うと、携帯から音楽が流れ出します。

テンポのいい、楽しげな曲。私は、さっきのユキさんの話を思い出します。

「もしかしてこれマキトの……」

「そ、アタシのためにとかほざいた曲よ」

その曲は電子音ではなく、きちんとした演奏でした。

「バンドで何回かやったから楽譜もあるしね、アタシが打ち込みで作ったのを自分で入れたんだ」

そう言いながら携帯をしまうユキさんの言葉は、どこかさびしげでした。

「曲だけ聞いたって正反対でしょ、アタシの曲とミヨちゃんの曲」

私はドキっとします。