ユキさんの車がライブハウスの、おそらく裏口につけられます。

なぜおそらくかというと、反対側の扉の前では興奮冷めやらぬと言った感じの若者が

いえ、私と同じか少し下くらいの女の子達がたむろっていたので、あちらが表ならこちらは裏なのだろうというだけのことです。

明かりが少なく、細い道に面していたので間違いはないのでしょうが。

あの時はたどり着いただけで満足していたのでしょう、私はその表らしい入り口にまったく見覚えがありませんでした。

「到着。さて、ちょっとオーナーと話つけないとね」

そう言いながらユキさんは車のドアを開けました。

安心してついてこいと言わんばかりに、その黒い建物に向かって歩いて行きます。

重そうな鉄の扉をユキさんが開くと、中はすぐ廊下になっていました。

ユキさんは迷わずにずんずんと進み、右手にあるひとつのドアを開けます。

「よっす!」

「あー、関係者とライブ出演者以外は立ち入り……ユキちゃん!」

ユキさんは入るなり手を挙げて、奥の方に座っていた男の人に声をかけました。