2月14日。

今年もまた、バレンタインがやってくる。


「チョコ!」


ベンチで足を組み、大声で私を呼ぶ彼。

今日も子どもたちとその親たちは、私たちに好奇の目を向けてくる。

気にしても仕方がないので、まっすぐに彼のもとへ急ぐ。

仕方がない、というよりは、慣れてしまった、と言った方が正しいのかもしれない。

ベンチに座ると、彼は「今日は何のチョコレート?」と聞いてくる。

無邪気な笑顔が、今はただ、苦しい。


「……」


彼の質問に答えることはなく、チョコレートが入った箱を渡す。

いつもと違う私の態度に、彼は不思議に思ったのか、顔をのぞき込んでくる。


「…どうした?」


どうしてこんな日ばっかり、優しいのだろう……。